【封竜伝-ほうりゅうでん-】
今は昔、天より飛来した怪物、その姿は峰のごとき長大な翼に、浜辺に打ち上げられた魚のようなぬめりを帯びた鱗、血のような赤い瞳、そして極めて畏れ多き姿を有せり。
怪物、地上の至る所にて炎を吐き散らし、人も獣も、花も木も土も、怪物の瞳に映る者は皆焼き尽くされ、海は干上がり、大地は今にも灰燼と帰さんとせん。
然れども、これを許さじと、月より四柱の神々降り立つ。之をノアクトゥル、ホノグア、ハソラ、ナルラトホテプと号し、己の神威を駆って、此の脅威に立ち向かうと人々に誓約をたてた。
先ず立ちはだかりしは、水を統べるノアクトゥル、彼は巨大なる洪水を起こし、怪物を水中に引き摺り込んだ。次に、火を司るホノグア、炎の力を使い、怪物を包み込み、その鱗と翼を焼き尽くした。 風を操るハソラ、竜巻を巻き起こし、怪物を弄びつつ、其の力を削り落とした。最後に、地を制すナルラトホテプ、大地より多数の手を生じ、無数の手は怪物を地中に引き摺り込み、そしてノアクトゥル、我らが長、手を挙げ、其のまま『タルタロス』と呼ばる地底へ叩き落し給った。
しばし、恐るべき唸り声鳴り響きたれども、じきにその音は衰え、遂に絶えたり。四柱、怪物再び地上にて出でんこと無くんと、是れ大穴に魔術を施し、地上に平和をもたらしむ。 以後、如斯の人智を超えた力を有せし事象、現象、『ドラゴン』と称せらるるものと成りぬ。
四柱、是れ大穴に近せざらんと言い含め、次の空より現れん怪物から、我々に魔法(エーテル)の扱い方を授け、世界の進展を奨励し、我々は何時も君らを見守りたり、との言葉を遺し、月に帰された。
是れ厄災を鎮めた四柱、のちには『月の四大神』と称せらるるに至り、地上の人々、深く感謝し、信仰せらるる者多く。また、彼らの去りし月、日毎にその姿変わり、如く巨大なる瞳が瞬きしように見ゆ、月、我らを見守りしと、人々、大いに安堵せし。 月は我らを眺め守り給う、その身は神々そのものなり。汝にエーテルの祝福を賜わん。
然れども、再びあの暗闇より厄災這い出んと疑いたりしや、遍く『穴』を恐れ、『月隠り』の日、忌日として畏れ、遍く穴や隙間を埋めざるならざる儀式、生まれたり。
【要約】
- 遠い過去、宙から飛来した怪物が現れた。
- 怪物は長大な翼を持ち、ぬめりを帯びた鱗と赤い瞳を備えており、恐ろしい存在だった。
- 怪物は火を吹き、地上のあらゆるものを焼き尽くし、海は干上がり、地上は荒廃した。
- 四柱の神々(ノアクトゥル、ホノグア、ハソラ、ナルラトホテプ)が月から現れ、怪物に立ち向かうことを約束した。
- ノアクトゥルは洪水を起こして怪物を水中に引きずり込み、ホノグアは火を用いて怪物を焼き尽くし、ハソラは風を操りながら力を削り、ナルラトホテプは地を操って怪物を地中に引き摺り込んだ。
- 怪物は『タルタロス』と呼ばれる地底へ封印され、唸り声が小さくなり、四柱の神々が地上に平和をもたらした。
- 四柱の神々は人々に魔法(エーテル)の使い方を教え、次回の怪物から身を守るように警告した。
- 四柱の神々は「月の四大神」として崇拝され、月が人々を見守っていると信じられた。
- 人々は再び怪物の出現を恐れ、「穴」を避け、月が隠れる日を忌み、穴と隙間を埋める儀式が行われた。
- 以来、人智を超える力を持った事象、現象は「ドラゴン」と呼ばれるようになった。
世界観設定…鯱丸様(https://twitter.com/zanclusfish)
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